about Taro House
Taroハウスは、ノランナランに次いで、Books×Coffee
Sol.のやんそるさんがプロデュースするオルタナティブ・スペースです。
3軒長屋のうち東側の2軒がそれで、Taroハウス1と2からなります。
この長屋の古い部分は、東九条に残る同種の建物として最古参で、百年前の大正末期に建てられました。もともとは、近くの肥料工場で働く労働者の住宅用に建てられたもので、二部屋だけの狭い長屋が密集する地区でした。
今ある炊事場の左手にかまどがあって、その煙の煤が壁を真っ黒にしています。水道もなく、水は井戸から汲んでいました。古材を使い回した屋根下の小屋組みに昔の大工技術が見られますが、戦後の高度成長期に日本中をおおった偽洋室化の波に呑まれ、土壁や木の柱は壁紙シールや化粧ベニヤにおおわれ、竿縁天井は化粧ボードに取って代わられました。
Taroハウス1のリノベーションはそれらの「皮」を剥ぐ方向で行いましたが、土壁の復元を模索するうち、床下の地面から九条土を発見しました。九条土は極少量採れる「幻の土」と言われる濃い灰色の左官塗り土です。Taroハウスの土壁には、掘り出した九条土とそれにわずかの墨を加えた土を塗り、大地につなぎ直しています。
一方、下地材の胴縁や塗装跡など、昔の施工プロセスの一部を残すとともに、増築されたダイニングキッチン部分はベニヤ張りのまま残しています。Taroハウス2の方はほとんど手を付けず、かつての生活感を色濃く残しているので、両家屋を通して昭和期の日本の住環境の変化や断層が味わえるでしょう。
昔は周囲に同種の長屋が密集していたので火事も多く、何度かの火災でだんだんと家が減りました。今はその跡が駐車場になっています。駐車場の余白にも見えない時空の断層が走っています。(井上明彦)
作業協力:やんそる、中谷正人、野村由香、山本紗佑里、西嶋夏海、佐々木萌水、佐藤由輝、奥山愛菜、前田香奈、黒崎茜
Taroハウス1
Taroハウス2
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