吉浦 嘉玲 個展「それぞれの部屋、凝らしの細部・呼吸の熱」( 報告 )

「それぞれの部屋、凝らしの細部・呼吸の熱」


基本情報:


会場: Taroハウス 1.2 

会期・時間: 2023年 4 /14 - 16. 21 - 23(金・土・日)  11:00 -, 13:00 -, 14:30 -, 16:00 -, 17:30 -

完全予約制の催し。各回、定員5名まで。予約の方法は、Google フォームで事前に予約、または会場入口に設置した黒板に名前を記入することで当日予約も可。 ( 設置した黒板《 ※ 》 )




企画概要:


予約制で、1日5回開催 ( 11:00-, 13:00 -, 14:30-, 16:00 -, 17:30- ) される催し。各回5人まで参加でき、2時間ほどの廻覧 (鑑賞) を行う。
会場は、建物の歴史を解釈しながら改修が施されたTaroハウス1 と、前の住民が生活した跡がそのまま残置されたTaroハウス2 の二軒の古長屋。隣接するこの長屋に、吉浦のシリーズ作品や、幾つかの部屋を設えた。廻覧は一軒目(前半パート)、二軒目(後半パート)の二部構成となっている。



廻覧の流れ ( 概要 ) : 詳細は後述 


一軒目 (前半パート)  

鑑賞者には予約した時間に会場一軒目の入り口で待機してもらう。時間になると作者が一軒目へと案内し、自作の茶棚にてお茶を点前したり、本催しの地盤としていること・作品や長屋のことなどの小話をし鑑賞者と談話しながら、一時間ほどの廻覧を行う。最後にはお土産が渡される。


二軒目 (後半パート)  

二軒目は作者が入り口まで案内し、扉の鍵を開けるのみ。鑑賞者は長屋内を廻覧しそれぞれのタイミングで、会場を後にする。




所感: 
本催しに参加していただいた方々のうち、5人の方に所感の寄稿をしていただきました。( 図録に掲載予定 )その一部を作家ウェブサイトにて公開しております。以下のリンクをご参照ください。



本ページには抜粋した記録を掲載しております。
より詳細な記録は以下をご覧ください。

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記録1. 本催しの地盤 :


本催しでは 《 部屋 があり、 部屋を設える人 がいるシーン》を、地盤としている。

ここでいう『部屋』とは、人が自らが呼吸をし、居るために設える、ある丁度よさの空間・時間の総体を『部屋』と呼んでいる。『部屋』には、部屋を設える人 (作者) が居る様子・また部屋の細部がある。この細部とは、作者が部屋で呼吸する・代謝する・設える体熱、設えの凝らしなど、粒状に『部屋』に無数に漂い、ある量感と温度をもつ湿度のようなものである。

この「細部」 をとっかかりにすると、部屋そのものの内容はさておき、《 部屋 があり、 部屋を設える人 がいるシーン 》を認識・解釈することができる。 このシーンを尺度として、いろいろな時代や場所、分野に点在する部屋たちを見渡す。


会場のTaroハウス1 は、井上 明彦 氏や彼が募った多くの人たちが関わりながら、改修が行われた。改修は、約百年前に建てられ今までこの長屋が経てきた時空間を解釈しながら、現場で何を残して何を残さないかを判断しながら行われた。例えば、建設当初の釜戸に燻された土壁・その後大工の手で貼られた木肌の壁・戦後のバブル期にベタベタと貼られた化粧ベニヤの壁が、この空間には併存している。またキッチンや襖枠の上には花柄の壁紙シールが残る。入り口の真上にはロフトがあり、改修時に梯子をつけアクセスできるように設えられた。また床下から発見された左官用の土を使い壁を仕立て、この土にアクセスできるよう床は開閉できるように仕上げてある。水平・垂直のさまざま座標にこの長屋への設え = 部屋の細部が存在している。


Taroハウス2は、ほとんど改修は施されておらず、前の住民が使っていた手すり、自作した棚、用途がよくわからないもの木片などが壁に残る。壁一面にぎっしり貼られたガムテープ、襖枠や壁に並ぶ L字や花柄の金属フック、カーテンの透明マッカン、廻り縁などが機能性をさておいて、活き活きと設置されている(ように感じる)様相から、顔も知らない長屋の住民の、長屋への設えの湿度が空間に充満しているように感じる。

吉浦は個作品において、「事物 」と「状況 」 の丁度によって『事物が ただそこにある様相』を設える。


吉浦は自身の部屋として、五種のシリーズ作品や、お茶を点前するための喫茶棚を二軒の長屋に持ち込んだ。また湿度計を置いたり、ベンチや棚の位置、手すりの向きを少し変えたりして現場でいくつか部屋を設えた。その準備をした会場で、お茶を出し、小話をし、お土産を渡したりすることで、彼が活動の地盤としている《 部屋 があり、 部屋を設える人たち がいるシーン 》を抽象的に設置した。


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作家プロフィール:

吉浦 嘉玲(よしうら かい)

2019年 ロイヤルカレッジ オブ アート MA Sculpture 修了

2016年 武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科 家具・インテリアデザインコース 卒業


京都在住・活動。

「事物(人やもの)」とそれを置く「状況」の丁度によって、事物が ただそこにある《様相》を作品として制作している。最近は、5種の抽象作品シリーズとして、版画の技法を応用したモノタイプ作品「見様 No. ~」、使い古された家具などを素材とし陳列棚を制作しファウンドオブジェクトを配置する「棚 No.~」、写真シリーズ「写真No.~」、建築模型を模した「模型 No.~」、質感・色・柄の配置「図案 No.~」を制作。


これらの作品群(とこの作品群が発生する作家の活動)の細部と、他人の(活動の)細部が、連なったり・差異をもってあるような空間を設えること、を試みています。


website: kaiyoshiura.com
instagram: @kai_yoshiura






[ 配布した案内 ]


[ 会場入り口: 左扉 一軒目(Taroハウス1)、右扉 二軒目(Taroハウス2) ]



[ 一軒目・フロアマップ ]




廻覧の流れ / 一軒目 (前半パート)  :

鑑賞者には予約した時間に会場一軒目の入り口に来てもらう。到着したらまず、会場ポストへ案内を入れてもらい (案内を持っていない場合はこの手順は省く、会場前のベンチで待機してもらう。


開始の時間になると作者が鍵を開け、一軒目の会場へ招き入れる。まず、作者が軽く挨拶をした後、二会場のフロアマップ·作品説明が載った冊子を鑑賞者に渡し、この企画が前後半の二部構成となっていることを説明する。説明が終わり次第、作者はお茶の準備を始め、鑑賞者は一軒目の会場の鑑賞をはじめる。お茶の準備ができたら鑑賞者に声をかけ、真ん中の空間に集まってもらう。


作者が茶棚にてお茶を点前する。本催しの地盤としていること (部屋があり、部屋を設える人がいるシーンについて)·5つの抽象シリーズ作品について·二つの長屋についてなどの小話をしつつ、流れで何かの話題について話したり、脱線し全く違う話になったりと、一時間半ほど談話をする。

話が一通り落ち着いたところで、作者が会場の床を開け床下から採取した土、ゴム版、案内を使って制作した「部屋の図案」と、活動についての文章を印刷した「コンセプトペーパー」をお土産として、鑑賞者に渡す。


前半パートは、全体が「チューニング」、部分が「舞台装置·映像の一部」として構成されている。








[ 一軒目 ]










[ 一軒目 ]







[ 茶点前の準備室 ]




[ 茶点前・小話 ]





[ 喫茶棚 ]




[ 会場の裏 ]







[ 前半部の終わりで行われる、お土産の制作 ]




[ お土産として渡される「部屋の図案」]



[ お土産として渡されるコンセプトペーパー《 ※ 》 ]




[ 二軒目・フロアマップ ]




廻覧の流れ / 二軒目 ( 後半パート )  :

後半パートの二軒目は作者が鍵を開けるのみで、自由に歩き回って作品·長屋をご鑑賞できること、中のガラス戸や戸棚は触らないこと、頭を打ちやすいところや、作品の取り扱いについての注意事項をいくつか、また作者はここでお別れであることを鑑賞者に伝える。それを伝えると作者は一軒目に戻り、中から鍵を閉める。鑑賞者は二軒目の長屋を廻覧しそれぞれのタイミングで会場を後にする。


二軒目は、柄模様のガラス障子が並び、畳、花柄のビニールカーペット、木の板敷、カラフルな石のあられこぼし、前の住民が施した、柱一面に貼られたガムテープ、あちらこちらに設置されたL字や花模様の金属フック、額のように付けられた廻り縁、キッチンのアルミシートなど、さまざまな質感が行き交う空間である。昼間は星柄模様の厚いガラスを通して、日光が空間全体に差し込む。小棚や収納も多い。


既にある部屋の細部 = 凝らし に参加しようと、物の向きを少し変えたり、湿度計を置いたりして設えた "濃度の部屋" "分量の部屋"や、紙束を一枚一枚めくり時間をかけて鑑賞する作品、会場の掃除に使用した雑巾、一軒目の長屋を改修した方のブログの言葉などを設置した。一軒目(前半パート)がチューニングとしたら、二軒目(後半パート)は細部を繊細に鑑賞するパートとして構成されている。









[ 二軒目 ]








[ 二軒目・分量の部屋 ]







[ 二軒目・濃度の部屋 ]









[ 会場細部 ]





[ 会場周辺 ]



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